現代の「メインフレームコンピュータ」を支えるエミュレータ(1)「資源論理分割」

By 岡田 - Posted: 2016/08/06 Last updated: 2020/07/02 - Leave a Comment
メインフレームコンピュータが生活を支えるようになってから長い時間が経ちました。
それと同時にハードウェアの進化が進んでいます。

CPU,DISK,コンソール装置,磁気テープなどなど

ハードウェアの進化にソフトウェア環境(OS,アプリケーション、業務プログラム)への影響を極力与えないようにするため、数々のエミュレータが現在のメインフレームコンピュータシステムを支えています

ソフトウェア環境に極力影響を与えない理由は「切替のしやすさ」と「切替作業量の削減」です
新しいハードウェアが発売されても、切替に(ソフトウェア環境の変更のため)多くの時間と労力が必要であれば、その時間と費用も考慮して費用対効果を考えなければなりません
しかし、エミュレータを使う事で、ソフトウェア環境への影響を極小化する事ができます

今回から、数回に渡り「メインフレームコンピュータを支えるエミュレータ」を説明していきます

第1回目はCPUのエミュレータ「資源論理分割」です

「資源論理分割」とは

1990年代に開発された資源論理分割(PR/SM、PRMF)は一つの物理コンピュータシステムで同時に稼動できるOSの数を
増やせる機能です
資源論理分割図

資源論理分割が出来る前までは、図中の上の物理コンピュータシステムで同時に稼動できるOSは一つだけでした
CPUに「資源論理分割機構」(日立での名称)なるハード装置と「PRMFゼネレーション」(日立での名称)を行う事により、一つの物理コンピュータシステム上で複数のOS(ゲストOS)が同時稼動する事が可能になります(LPAR1,LPAR2,LPAR3)

「資源論理分割機構」がハイパバイザの役目を果たします。

資源論理分割のメリット

資源論理分割を導入する事で、以下のメリットが考えられます
・コンピュータ設備の設置スペース削減・・・CPUの設置スペースが区画の数に比例して削減する事が可能になります
・費用・・・コンピュータシステムがメーカーからのレンタル契約で使用している場合、CPUの削減に応じて費用が減ると同時に、(日立の場合)ソフトウェアのレンタル料も削減する効果があります。
・システムの集約による運用コスト削減・・・資源論理分割を導入する事で、今まで異なる場所で運用していたコンピュータシステムを一箇所に集約できるようになります。この場合、運用コストが削減できます。コンピュータシステムを集約する際、一時的にデータ移行や設備の移設等作業費用は増えますが、、


資源論理分割を導入する際に行う事

資源論理分割を導入する際、重要になってくるのが物理コンピュータが持っている資源(下記参照)をどのLPARに与えるか、与える方法(占有、共有)を検討する事です。検討した結果をPRMFゼネレーションという形でハイパバイザに認識させます
・CPUが持つ資源(CPUのサービス比率、メインメモリの容量)
・周辺機器資源(磁気ディスク、コンソール、磁気テープなど)

ハイパバイザの管理下で稼動するゲストOSにはそれぞれLPAR番号というユニークな番号をを決める必要があります。
日立の場合、1から15までの数字です(4ビット管理。0は物理コンピュータ自身を意味しているため、使えません)

各ゲストOSには個別に「入出力ゼネレーション」を行いますが、そのゼネレーションパラメタはPRMFゼネレーションパラメタと装置アドレス・チャネルパス情報等が一致している必要があります。
一致していないとゲストOSからのハード指示に対して、受け取ったハイパバイザが管理しているパラメタ(PRMFゼネレーションパラメタ)と違うため、動作できません。
システム更改などの作業の際、物理コンピュータシステムに変更があった場合、最初にPRMFゼネレーションパラメタを作成し、各ゲストOSの入出力ゼネレーションパラメタを作成していく方法を取ります。

今までスタンドアロンコンピュータシステムとして稼動していたコンピュータシステムが資源論理分割の配下で稼動するには、LPAR番号を決める事とPRMFゼネレーションパラメタに合った入出力ゼネレーションが最低限必要なのです


次回以降で説明しますが、「磁気テープ」エミュレータ(仮想テープ)でゲストOSに認識させるための磁気テープ装置・磁気テープライブラリ装置はダミー定義のため、PRMFゼネレーションパラメタに存在する必要はありません


資源論理分割の弱点

これは日立でシステム管理をしていた時の記憶なのですが、物理コンピュータを丸ごと停止させるコマンドがあります。このコマンドをメインコンソールから投入すると、現在稼動している全てのゲストOSを停止させてしまうので、誤作動させるととても厄介なコマンドです。

コマンドが何であったかは忘れましたが、当該コマンドはハイパバイザが障害となった際、空間ダンプを取得するために必要な操作であるため、現在も残っていると思います。
各サイトごとに誤作動対策はしていると思いますが、、

次回は「磁気ディスク装置」のエミュレーションについて取り上げます
Posted in 日立メインフレーム • • Top Of Page